今日はHBSとHKS(ハーバードケネディースクール)とのJointDegreeのHiroの主催で、元新生銀行社長のThierry porte(ティエリー・ポルテ氏)と日本人HBS生の飲み会に参加してきました。ポルテ氏は1982年のHBS卒(ベイカースカラー)でモルガンスタンレーの日本支社で長年勤め、新生銀行の社長を2005年から2008年11月まで勤めた方です(日本では17年間勤務)。現在は、JC FlowersのOperating Advisorを勤める傍ら、ハーバード大学のUS-Japan Relations of the Weatherhead Center and the Reischauer Instituteに身を置いている方です。
先日のAsianBusinessConferenceでもKeynoteスピーチをされていましたが、今回はHBSの日本人学生と飲み会ということでざっくばらんに日本経済、米国経済、新生銀行でのことなどを伺うことができました。ポルテ氏には、昨年のJapanTripでも講演してもらったのですが(新生銀行社長時代)、その際にはすぐにロンドンに仕事でたたねばならないということで十分に話す時間がとれずあまり話せなかったのですが、今回はたっぷりお話できました。日本のメディアの報道で、瞬間湯沸かし器など怖い報道がされていましたが、実際にお会いすると話好きだけれども、自分のことでも間違っていたことは間違っていたと言えるとても謙虚な方で、日本をとても愛しているという印象を受けました。
新生銀行に関連することはマナー上書きませんが、素直に当時どういうことを考えてどういう決断を下したかを話してもらえました。(なぜコンシューマーファイナンスをさらに拡大したかなど)
新生関連以外で印象に残ったことは、
・日本の90年代から2000年代の回復は米国政府にとってもとてもいい教材である。オバマ政権のガイトナー財務長官とも、サマーズ国家経済会議(NEC)委員長とも話したが、彼らも日本がバブルからの再生のためにとった処方箋については良く学んでいる。
・日本が直面したバブル崩壊は、5年間で株式市場の時価総額が三分の一にになるというこれまでどの先進国が直面したことのない、未曾有の危機だった。日本政府は、苦労しながらも住専問題の処理(住宅ローン問題)、銀行の国有化、不良債権問題など、誰も解決したことのない問題を、何の模範と出来る処方箋もない中で、幾多の政権交代を経ながら解決した。これは素晴らしいことであるし、米国や欧州も参考にすべきである。Lost Decadeではない
・当時アメリカ政府は、やれ公的資金を銀行に注入しろ、不良債権は早くWriteDownまたは売却して処理しろ等好き放題言っていたが、今こうした問題がいかに難しい問題で解決しがたいかを痛感している。
・アメリカはNo Doubtでデフレーションに突入すると思う。まだまだDe-leverageは進み、Debtが下落しつづけるAssetの価値の水準に追い付くまで、止まらないだろう。
・アメリカ社会は、TARP(金融安定化策)で公的資金注入を受けた企業は外国人労働者を雇ってはいけない等、外国人の雇用を防ぐようなことをしているがまったくばかげている。アメリカの強さは、外国人かアメリカ人かにかかわらず優秀な人間を受け入れてきたことにある。現在の流れは明らかにアメリカの長期的な発展に逆行する。
・アメリカの過大なLeverageを掛けてもうける投資銀行モデルは間違っていたことが証明された。ただ、一方で日本の銀行や証券会社のモデルが正しいと証明されたわけではない。なので、野村と旧リーマン、MUFGとモルガンスタンレーは、どちらでもない新しいモデルを作らなければならない。
・日本のシニアな政治家とも交流があったが、彼らは本当に一般国民の感覚を理解していない。彼らは地下鉄に乗ることもないし、コンビニで買い物をすることもないし、牛乳1パックの値段も聞かないとわからない。彼らが、政治をする限り日本の未来は暗い。(これは、先日HBSで講演した元IKEA Japan CEOのTommy Kullberg氏もおっしゃっていました。)
・日本の君達若者はより声をあげ、こうした社会を変えていかなければならない。こういう話をすると一人ひとりの力は小さいといって悲観的になるが、諦めるのではなく一人ひとりのレベルから声を上げていくことが重要だと思う。
・日本の高齢化社会について。とても重大な問題で、世代間闘争的な問題としても捉えられがちだが、ベビーブーマーは君たち若い世代(20-30歳台)がしっかりと年金や社会保障の財源の負担をしないと困ってしまうので、むしろallyと言える。君たち若い世代が声を上げれば、協力してくれるのではないかと思う。
・世界銀行は1960年にアジアで今後一番成長する国はフィリピンだというレポートを発表した。誰も、当時日本が世界2位の経済大国になるとは考えもしなかった。そんな中日本は現在の経済的地位を確立した。今、日本の政治・経済・社会システムは内側にこもり停滞しつつあるが、日本のポテンシャルはとても高いし、歴史がそれを証明している。
・君たち若い世代が、日本を変えて欲しい。
といったことでした。
正直、ディスカッションをしていて見識の深さと熱さにかなり感動しました。
自分もやるぞ、という気持ちにしてくれるとても気持ちのいい飲み会でした。
はじめておじゃまします。HBSMBA93のMSです。テリーはモルガン時代私の直属の上司でした。瞬間湯沸かし器という話は正真正銘、ホントです。
投稿情報: MS | 2009年3 月13日 (金) 09:04
あと、テリーはコンビニなんか行かないし、地下鉄にも乗りません。牛乳1パックの値段を彼が知っているとも思えません(笑)。あれだけ長い間日本に住んでいて、あれほど日本語ができない外人もめずらしいと思います(しかも奥さん日本人なのに・・・・)。
いや、いい人ですが(フォローしとかないと・・・・・・)。
投稿情報: MS | 2009年3 月13日 (金) 09:09
IT(アウトソーシング)ではインド・パワーが凄いの
ですが、新生銀行の例は有名です。
そんな「インド・パワー」のセミナーでThierry porte氏の
挨拶は拍手をもって迎えられました。
(そんなことを記しました)
http://www.news.janjan.jp/world/0711/0711195840/1.php
投稿情報: 浜地道雄 | 2009年3 月13日 (金) 21:13
MSさん
コメントありがとうございます!
ポルテさん、確かに昨年Japan Tripで講演をお願いした際には、ご機嫌が悪かったらしく怖かったです。
今回はHBSの後輩とのプライベートな会だったので、リラックスされた感じでそういう印象は受けませんでした。
確かにコンビニには行かれなさそうですね(笑
投稿情報: TY | 2009年3 月15日 (日) 23:34
浜地さん
コメントありがとうございます。
前職に新生銀行出身の同僚がいたのですが、行内でターバンを巻いているIT担当の方がいらっしゃったらしく、古くからの長銀マンの型との対比が面白かったと言っていました。
投稿情報: TY | 2009年3 月15日 (日) 23:38
ポルテさん その後 お元気でしょうかね?
投稿情報: さかい | 2010年3 月21日 (日) 12:34